櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ
Ⅶ*舞闘会





 ***



 とある晴れた日の朝


 フェルダン王国から西に遠く離れた水の大国アイルドールでは、一つのビッグニュースが飛び交っていた。




「やったぞ!!テオ!」


「…何です?朝早くから」


 目をキラキラ輝かせた若き王子ヨハンが、彼の教育係兼補佐官であるテオドアの執務室に飛び込んでくるなり、まだ小さな身体で仁王立ちになり満面の笑みで叫んだ。



「舞闘会に行ける! 承認の書状が届いたぞ!!!」




 *




 世界には二百を超える国が存在する。


 その中でも政治・経済、様々な面で世界の先陣を切って走る七つの国がある。




 自然豊かな草木の王国『アントス』


 風車が美しい風の王国『フリューゲル』


 太陽の沈まぬ光の王国『エンジェル・リヒト』


 監獄要塞、常闇の王国『ドゥンケルハイト』


 科学最先端の雷の王国『ドナー』


 一面銀世界氷雪の王国『ネージュ』




 そして


 太陽と平和を掲げる炎の王国『フェルダン』




 これら各国の王が一つの国に集まり、四年に一度国際会議を開催する。


 《舞闘会》というのは、この国際会議が終った後行われるパーティーの名称だ。


 世界中の国が会議よりそちらに注目している。


 それはどうしてか。


 《舞闘会》がその名の通り、闘いを交わすパーティーだからである。




 忠告しておくが、闘いを観戦し楽しむわけではない。


 最大の目的、それは、世界最高峰の戦闘集団フェルダン王国の特殊部隊の戦闘技術を間近で見れる事。




 普段彼らは滅多に人前で戦う事がない。闘うとしても一瞬で片付いてしまう。


 故に情報がなかなか入ってこない。


 二つ名がつく程度の漠然とした情報だけが散らばっているぐらいだ。


 だから、人々は集まる。


 自国の戦闘技術の向上を目指し、フェルダンだけでなく他の六つの先進国の戦いを見るために。



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