櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ
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一方その頃、開催国フェルダンでは。
「うわっ…!!」
「しっかりしろ、ユウ!!動きを読め!!!」
「ッ…!…はいっ!!!」
舞闘会に向け、激しい鍛錬が行われていた。
場所は特殊部隊用の闘技場。
そこにはボロボロの姿で立ち上がり闘うユウと、彼を叱咤するイーリスの姿が。
オーディンの一件から数か月が過ぎ、ユウを取り巻く環境は大きく変化していた。
あれからフェルダンに残ることになったユウ。
彼はある夢を抱いた。
それは勿論、ルミア達と同じ特殊部隊の騎士になる事。
この国の魔法使いなら誰もが一度は抱く夢だが、ユウが同様にその夢を抱いた頃にはかなりの出遅れが生じていた。
幼い頃から長らく魔法を使えておらず、知識も力も身体も何一つ他人に勝るものがない。
その遅れ分を取り戻そうとルミアの力も借りて訓練と勉学に勤しんだ結果、ユウは急激な成長を見せ、無事魔法学校を卒業しフェルダンの国王軍に入ることに成功した。
もともと素質はあったのだ。
魔力の質も量も、運動真剣も悪くない。
あとは訓練と慣れあるのみ。
だからユウは軍に入ってからも通常以上に鍛錬に時間を費やした。人の倍働き、訓練し、それこそ血反吐を吐くほどに身体を酷使した。
そのかいがあり、ユウ・アルシェは気が付くといつの間にか騎士見習いのトップになっていたのだ。
そして今、彼は舞闘会に出場するために、特殊部隊イーリスの指導を受けているのである。
舞闘会は四つの部門に分かれ、トーナメント形式の戦闘を行う。
一対一で行う第一部門『Duell』
二対二で行う第二部門『Tag』
複数戦で行う第三部門『Aggression』
この三つは、舞闘会に参加する国々がそれぞれに選出した騎士達に、フェルダンの特殊部隊を加えたプロ騎士達が闘う部門。
最後の四つ目(正確には一番最初に執り行われるのだが)、国の中でも将来有望な若い騎士のみ出場可の部門
『Tapfers』
これにユウは出場しようといていた。
他の国にはどうか知らないが、フェルダンからは一人しか選出されない。
国の代表、次期特殊部隊に最も近い騎士として人前で戦うのだから軟な覚悟じゃ選ばれないだろう。
だからルミアやイーリスたちに教えを請い、代わる代わる指導をしてもらい鍛錬する日々をユウは過ごしていた。