櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ
イーリスの話に感動しながら、ユウは一つ引っかかることが。
(今、二人って言った…? 二人がここに居るからだって……)
「イーリスさんの好きな人って亡くなったんですよね…?」
「ん?あれ、言ってなかったっけ。今話していたの、ルミアのことだぞ」
「・・・・・ええエエェーー!!?」
案の定驚愕するユウ、それをイーリスはおかしそうに笑った。
「驚くのも無理ないよ…俺もびっくりしたもん。もう会えないと思ってたのに、遠征から帰ってきたら普通に居るんだもんなあ。ふざけてるよ、あの兄妹は」
「え、え、ええ…オレまだイマイチよく分かってないんですけど…ルミア先生は亡くなったんですか?生きてたんですか?」
「確かに死にかけた、十年前にね。だけど異世界に飛んで何とか生きてたらしい。で、今年の初めに国に帰って来たんだよ。まあその後も一度死んだりしてるから、もう彼女のことは諦めたよね。いちいち心配してたらこっちの身が持たないって」
「???…先生って何者なんですか…??」
「あははっ!ホントにね。何なんだろうねえ。俺もいまだによく分かってないよ」
ただ、間違いなく俺達は彼女に救われた。だからここにいる。
イーリスは悪戯っぽくニッと笑いながらユウを見つめる。
「ユウってさ、ルミの事好きだろ」
「んなッッ何でッ…!」
途端に噴火したように真っ赤になるユウ。
「見てたら分かるよ。みんな知ってる」
「ほ、ホントに…」
「まあいいけどさ、ルミア狙ってるなら覚悟した方がいいよ。敵が多いから」
「え゛」
「最大の難関はジンノだね、優秀すぎる番犬だから少しでも抜け駆けして接近しようものなら飛んでくるぞ。魔法学校の時みたいにはいかないからな」
「はあ…」
「他にも特殊部隊の連中はだいたいルミアに惚れてるから。アポロも好きだろ、ネロもだし、オーリィさんも隠しちゃいるけど惚れてる。ウィズも実は惚れてんだよなあ…二人とも頭いいから話が合うみたいでさ。リュカはちょっと違うか、兄妹と思ってるからなぁずっと」
「……まじっすか…」
「あ、俺は気にしなくていいよ。好きだけど告白しようとは思ってないから。今は、ルミが元気でいてくれればそれでいい」
でも、ルミには本命がいるからね。
イーリスのその言葉に、それまで落ち込んでいたユウが驚いて顔を上げた。
「え、本命…ですか?」
「ん。うちの国の第二王子」
「……!!! んなッッ!!…お、俺の勝ち目、全然ないじゃないっすか…」
「ははっ!そう落ち込むなユウ、まだ諦めるには早いぞ」
どんより落ち込み首を垂れるユウの頭を、イーリスはいつもの和かな笑みを浮かべてポンポン優しく撫でるのだった。