櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ





「さて、訓練再会しましょっか」


 イーリスの笑顔の一言と共にユウの訓練は再会する。



 ◆



 一方その頃、王宮のある一室にて。



「はあッ!!? 何言ってんですかシルベスター国王陛下、やですよ」


「そうは言ってもなあネロ。しょうがないだろう、頼むよー」


「やです」



 特殊部隊ネロと国王シルベスターが押し問答を繰り返していた。



 一体何の話かと言うと。


「どうして俺がフィンス家を継がなきゃいけないんです!?」


 
 フェルダン王国の王族が誇る四大分家



 オーリングが当主、プロテネス家


 アポロが当主、ヘリオダス家


 当主の居ない空白の一族、クリスタリア家


 国潰しを目論んだ大罪の一族、フェンステルニス家



 このフェンステルニス家は、国潰しの罪により一族ごと廃する話が出ていた。


 しかし国際会議と舞闘会の手前それはまずいと、結局フィンス家は存続させることになったのだ。


 ただし、当主であったグロルは罪によりその地位を失ったため、次期当主は娘のアネルマに。


 …と言う話だったのだが、


 グロルのもう一人の子供であるネロ


 その彼に話が回って来たのである。



「アネルマ本人と、グロルからの要望なんだ。お前を次期党首にと。受けてくれ、頼むよ…」


「やです。俺庶民の生まれですよ」


「でもフィンス家の正統な後継者でもあるし…アネルマとグロルのゴリ押しだから…会議でも満場一致で賛成だったしぃ…」


「やですって」


「……アポロ達もぜひって…」


「嫌」



 あまりに頑固なネロに、シルベスターは半泣き状態。


 拳を握りしめて口をへの字にし、ぷるぷる震えてる。


 その姿にネロははあ、とため息を付いた。



「…ったく…意地でも俺をフィンス家に引き込みたいんですか?嫌だっつってんのに」


「何で嫌なんだよお…貴族になれるんだぞ。なんだ、グロルの事が憎いから嫌なのか?」


「……はあ、あのですね…俺は別に貴族になりたいわけじゃないんです。あの人は…別にもう憎くないですよ、母の事大切に思ってるみたいだし、その母も一緒にいて楽しそうだし。ただ俺は、俺は…母の息子で、アポロの友達で、仲間と同じ騎士であれればそれだけでいいんです。貴族になったら、今のままでいられなくなりそうで…」



 だから、嫌なんです。
 

 ネロの言い分に、シルベスターは困った様に口を尖らせ頬杖をつく。



「ネロの言い分は分かった…だが、俺もこの国の王として引くことは出来ん。せめて、フィンス家に籍だけでも置いてくれないか。当主の件はアネルマにお願いしてみるから。な?それで手打ちとしてくれませんか?」


「………」


「頼むよぅ…友達の頼みは断れないんだよぅ」


「…友達って、グロルさんですか?」


「……うん。あいつさあ、ほら呪いかかってて事件なんか起こしたけど、呪いが解けた今すっかり元に戻ってさあ。リラにベタ惚れじゃん。あ、君のお母さんね。でさあ勿論君の事も心底気にかけてるわけよ。大好きな人との間に奇跡的にできた子だし?その子供に譲りたいんだと、ろくなもんじゃないが自分の地位を」



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