櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ
◇
一国の王子と言うものは、一般的に才色兼備
頭もよく、見た目も麗しく、性格もいい完璧超人と思われがちだが
実際には・・・
「...違う、そこはこっちの公式だ。その計算も違う。微分のここは逆」
「、え、ええ...っと」
「そうじゃないわ。こことここを逆にするのよ。そこから代入して引き算」
「......っ...分からーん!!」
意外とバカだったりする
◇
ここは校内に併設された図書館
部屋の一番奥テーブルに三人は居た
苦手な数学をさんざんやったシルベスターは「...死ぬ...」と声を漏らしながらテーブルに突っ伏している。
魔法学校はなにも魔法の事だけを勉強するわけではない。
通常の学校で学ぶことも当然やるわけで。
「......数学って何?...イミワカンナイ......」
数学のやり過ぎで頭が爆発したのか、片言になってしまっている。
そんなシルベスターを、向かい側に座るグロルは苦笑いを浮かべて見つめた。
「あら、シルベスターくん寝ちゃったの?」
せっかくコーヒー持ってきたのに。
飲み物を買いに行っていたリラが戻ってきた。
「グロルさんはブラックだったよね」
「...ああ。すまん」
差し出された温かいコーヒーを受け取るグロル。
するとリラは、グロルがマグに口をつける直前、何も言わずに彼の隣に座った。
その行動にグロルはぴしりと固まる。
(さっきまでシルベスターの隣に座ってたのに...)
いや、さっきまでだけではない。
初めてだ。
彼女がグロルの隣に座ったのは。
コーヒーの入ったマグを持ったまま動かなくなったグロルの隣で、リラはココアを飲みほっと息をついた。
「...んーおいしい」
笑顔を浮かべて、口の周りについた甘いそれをぺろりとなめる。
ココアの甘い香りと同時に、リラの花のような魔力の香りがふわりと広がった。
「......っ」
しかめたグロルは、その香りを消すためにコーヒーを一気に飲み干す。
その心を酔わせるような甘い甘い花の香りに、惑わせれないように