櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ
《初めに入場してきたのは自然に包まれた植物の大国!迷彩柄の軍服がその力強さを現します!アントス王国!!》
《続きまして、名を聞いただけで身も凍る氷結の国ネージュ王国!!銀白のマントと毛皮の帽子は雪国特有の美しさを感じさせますね!》
《さてさて、お次は世界トップの科学先進国!年中雷が鳴るという噂は本当なのか、ドナー王国!!騎士ですら学者のような風貌だがその強さはお墨付き!》
《後に続くのは、かの脱走不可巨大監獄を要するドゥンケルハイト王国!悪人をけして逃がさない、その強さはいかほどか!》
《続いて戦いとは無縁の安息の地、極楽天国エンジェル・リヒト王国!驚くことにその騎士は皆女性!と言っても甘くない!!用心すべし!》
《さあお次は七大国以外からの登場!鉱山大国ロックハート王国!その鍛えられた筋肉はどこにも負けない!!力自慢の騎士達だ!》
《再び七大国フリューゲル王国!山谷地帯にすむ彼らは風を操る!空を飛ぶのは鳥だけじゃない!その戦い方は誰にも真似できないぞ!!》
《再び七大国外から登場!水の京、アイルドール王国!!永久独立を謳う彼らの強さは尋常じゃない!滅多に拝めぬその闘いっぷりとくとご覧あれ!》
《出場国は残り二つ!ターバンを巻いた独特の部隊服で現れたのは砂漠の王国ヴェステ!!!彼らの起こす砂塵は小さな国をも潰す!油断大敵!!》
それまで一気に紹介していた声が一度止む。
会場もまた、シン、と今までが嘘のように静まり返り、最後となる騎士たちの登場を生唾を呑んで待ち構えた。
天井の抜けたドーム、そこから差し込む光の中に真っ赤な部隊服が現れた途端
ワァーーー!!!と歓声がボリュームマックスで会場全体を包む。
《来ました!!ラストを飾りますは世界最強の騎士団!!!僅か十名という最少編成でありながら過去に出場した舞闘会で負けなしという有り得ない戦歴を持つ彼らは、たった一人で千の軍勢と渡り合う!!!その血に濡れたような真っ赤な部隊服を見て誰かが呼んだ!!!彼らを【紅の騎士】と!!!彼らを有するは、太陽とサクラの王国、その名もフェルダン!!!》
煩いほどの歓声は王都の街全体を覆った。
騎士たちはその凛々しい表情を崩すことなく、正面に控える自分たちの王に向かって敬礼をする。
これはスポーツでも何でもない。
友好を結んだ国々の騎士たちが、己の力を示す場であり、
忠誠を誓う国の名をそれぞれが背負って闘う決闘の場。
遊びなんて言わせない。
《括目せよ!!ここに新たな歴史が刻まれる!
舞闘会の開幕だ!!!!》
甲高いファンファーレと共に
火蓋は切って落とされた。