櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ
■1st『Tapfers』 ユウの夢
◆◇◆
「(か、かっこいい…!!)」
騎士たちの入場を、傍の控室からこっそり覗いていたユウは彼らの凛々しすぎる背中に感動のあまり頬を染めて打ち震えていた。
普段の彼ら知っている分、今会場に立つその姿が何倍もかっこよく見える。
(もうなんか、雰囲気が全然違う…!強さが全身から滲み出てる…!!やばい、カッコいい!!)
もはや猛烈なファンの一人と化してしまったユウは心中で何度も悶えた。
そんな彼の耳に、何やらひそひそと話し声が聞こえてくる。
「おい見ろよ、フェルダンの騎士の中に女がいるぜ」
「まじか。うわっ!めっちゃ綺麗じゃん!!」
「なになに…うお、ホントに美人な人がいんじゃんか!スタイルもめっちゃいい」
「闘うのか!?あれで闘うのか!!?」
ユウがいる場所は、この後すぐに始まる新人騎士のみ出場可の部門の控室。
故にここに居るものは皆、ユウと同じ年代の見習い騎士という事になる。
見習いと言えどそれぞれの国の代表なのだから、次世代を担うだけの強さを持ち合わせているのだろう。
(だからって…ルミア先生を見世物みたいにされるのは…ちょっとムカつく…)
何も言わずとも胸の内ではそんなことを想いながら、ユウは支度を始める。
その間も男たちの会話は続く。
「でもさ…フェルダンの特殊部隊の女って、実際問題強ぇのかな?」
「…他の連中よりは弱いだろ」
「もしかしたら今年はフェルダンに初の負け星付くかもしんねえな!」
くすくす笑いながら愚かにもそんな話をする男たちを、ユウはため息をこぼしながら馬鹿だなあと憐れむ。
彼らは知らない。彼女がどれだけ強いのかを、どれだけ恐ろしいかを。
(俺は知ってる…あの人たちみたいになるんだ…絶対に!!)
心の中で改めてそう固く誓ったユウは、キッと前を見据える。
彼の闘いが今始まろうとしていた。