櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ
□2nd『Duell』 二人の若き者
◇◆◇
「…んん、ここ、どこやねん…」
シュベルマーはゆっくりと目を覚ます。
体中が痛い。
その痛みで、自分が先ほどの試合に負けたことを思い出した。
悔し気に眉をひそめていると、ふいに彼の視界の隅からユウがにゅっと顔を出した。
「あ、起きました?病室です」
「うおっ!!あんさん…!!!何でここに!」
「ちょっと話したくって」
驚くシュベルマーだったが、すぐに状況を飲み込み、ベッドの上で起き上がる。
ユウの言う通りそこは闘技場に併設された簡易病棟の病室だった。
試合が終わり気を失っているところを運ばれたのだろう。
「イテテ…」
「あ、大丈夫ですか」
「ハハ…あんさんがやったのに心配すんですかぃ」
「…すいません」
「アッハハ!謝らんでくださいよぅ、真剣勝負だったんです、俺も本気でやったしねぇ」
「あ…そうですね」
ユウは自分の包帯を巻かれた腕を触り、確かに、と笑う。
シュベルマーもクスクスと笑い、二人の間には初めて会った時とは全く別の穏やかな空気が流れていた。
すると唐突にユウが切り出す。
「あの、俺もベルって呼んでいいですか。シュベルマーさんのこと」
「え、」
「友達、試合が終わったら考えるって約束でしたよね?俺、あなたと友達になってみたいです」
言われたシュベルマーは思わずキョトンとしてしまう。
「え、ええ?まさか本気で考えてくれはるとは思っとらんかった…ええの?俺、あんさんに酷い事言ったけど…」
「いいんです。むしろそれが当然の反応だったんです。ここの人たちは人が好過ぎる。何のためらいもなく罪人の子を受け入れる。偏見がなさすぎるんです。そんなんでよく今までやって来れたかと言いたくなるほど、国民も騎士も、国王までも無垢なままに俺という人間を信じてくれたんです」
恵まれたのだ
俺は
人に、国に、あの日出会った全てのものに
「…騎士になってから今日まではとにかく舞闘会のことに必死で意識する暇もなかったけど、忘れたことは一度もない。はなから一族の罪はこれからもずっと背負う覚悟だったんです。あなたのように真正面からそのことを言ってくれる人は俺にとってはありがたいんですよ」
「はあ、変わっちょリますねぇ、…あんさんが皆に好かれるのがなんとなく分かりるような気がしやす」
笑顔でそんなことを言うユウに、シュベルマーはボカンと呆れながらも毒気が抜けきってしまった。
だからだろうか。
ほとんど無意識
シュベルマーは語り始めていた。
話すつもりのなかった自身の過去を。