櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ









『とうとう『Duell』第一グループ決勝戦が始まります!!闘いますは、今回の舞踏会にて初めてその実力を人々の眼前に惜しみなく披露した男!【破壊卿】ネロ・ファーナー!!
対しますのはその相棒!圧倒的な回復能力と折り紙つきの戦闘力で、ここまで難なく勝ち上がりました!!【不死鳥】アポロ・ヘリオダス!!!
さあ!試合まもなく開始です!!!』



アナウンスが流れる中、ステージ中央で向かい合うネロとアポロ。


ネロは左腕を首から吊ったままである。


「まさかお前とこの舞台で戦うことになるなんてな、なぁネロ」


「…そうだな」


「まさかと思うけど、棄権なんてするつもり、ないよね?」


「……安心しろ、アポロ相手に棄権する理由はないよ」


「ハハッならいーや!」



ご機嫌なアポロは準備体操をしだす。


ネロは吊られたままの左腕を擦りながら、人々の目には映らぬ闇に声を掛ける。


「…トリシューラ」


『…何だよぅ、説教ならもうイヤだぞ…』


先の試合の元気が嘘のようにしょぼくれた声が返ってくる。


相当叱られたのだろう


ネロはいつもとまるで違うその声にくすりと小さく笑い、そして尋ねた。


「──…なあ、俺の肉はうまかったか?」


唐突にそう聞かれたトリシューラはびっくりした様子だったが、すぐに答える。


素直な感想を。


『…!ああ、サイコーだった!!めちゃくちゃ美味かった!!』


「ふっ、ならいい。不味かったなんて言おうもんならへし折ってやる所だったが、今回は許してやる」


『ま、マジで!?』


「かわりに、この試合中、お前には俺の『左腕』として働いてもらうぞ」



鋭い眼光が、アポロの方を向く。


アポロもまた、ネロのそれを不敵な笑みで見つめ返す。



「俺だってやるからには負けるつもりは毛頭ない。普段なら神器は使わない所だが、今回ばかりは使わせてもらう」


「いーよ、それでフェアだ。俺も怪我人相手に手加減しないとは言いきれないもん。腕がそれなら心置き無く、お前をぶっ飛ばせる!」


「調子に乗るな、勝つのは俺たちだ…!!」

『ッシャー!!!やったるぞー!!』




そんな二人を包むように、三度の甲高い鐘が鳴り響く。


その瞬間、会場のど真ん中で轟音と爆風が巻き起こった。




二人の戦いが、始まった。




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