櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ
「...っす、好きな人がいるんだろう?」
「...え、」
リラの瞳が揺れる。
その反応を見て、グロルの中でそれが確信へと変わった。
「っ...大丈夫だ、きっと上手くいく。あ、あいつは良い奴だ、心配しなくていい」
「...?」
「...何を恐れてる、身分の差か?あいつは身分の差なんて気にするような奴じゃない!俺が保証する
不安なのか?あいつは優しいし、人の事を思いやれるし、大切にしてくれる。それに...」
どうにかして話をシルベスターの方向に持っていこうと、普段口数が少ないくせに必死になって言葉をまくしたてる。
それに困惑しているリラは、言葉を遮るように声を張った。
「ちょ、ちょっと待って、グロルさん誰の話してるの?」
「え、...だって、ファーナーはシルベスターが好きなんだろう、だから」
「ええっ!!?」
リラの素っ頓狂な声に、グロルは逆に目を丸くした。
「私が、シルベスターくんを、好きって?」
「...あ、ああ」
「はああ...なんだ、そういう事...」
そう呟くと、へなへなと座り込むリラ。
グロルは何のことか分からずに、座り込んだ彼女を見つめてオロオロとする。
「......ど、どうしたんだ一体」
「...っグロルさん!!貴方に言いたいことがあります!!」
座り込んだリラは、キッと怒った様にグロルを見つめ返し、言うのだ。
「私は、貴方の言う通り、恋をしてます」
「......っ」
あからさまに落ち込むグロル。
そんな彼を置いて、リラは続ける。
「その人は強くて、優しくて、まっすぐで、」
(...そうだ、それがシルベスターという人間だ)
「照れ屋で、不器用で、無愛想で」
(そうそう...って、ん?)
「おまけに勝手に勘違いして、勝手に突っ走っちゃう。人の言葉も聞かないで」
(...ん??)
「それに鈍感!周りの人の事に関しても、自分の事に関しても!!ここまでとは思わなかった!」
明らかにシルベスターからかけ離れていく人物像。
自分に向かって怒るリラ。
何の事か未だ理解できないグロル。
困惑顔の彼に
「まだ分かんない?」
と、リラはとどめの一言を。
「もうっ、...でも、そんな不器用で鈍感な貴方が、私は大好きなの」
「......は...何、を」
「好きよ、グロルさん」
これでも分かんない?
固まるグロルに目の前で、
リラは笑っていた。
花のよう可愛らしい、
グロルが求めた笑顔が、そこにはあった。