櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ
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小さな変化は、数週間前からあった。
いつものようにエンマに身代わりを頼んで執務を抜け出し、約束の時間、約束の場所へと向かう。
人目を忍び、昼空の下、桃色の花びらが舞い散る中を。
近頃、ルミアはよく遅れてくる。
これは変化の一つ目。
前も時々あったけど、ほとんどは時間ピッタリかそれより前に来ていた。
そして二つ目。
「シェイラさん、ごめんなさいっ!!」
数分後に遅れてきた彼女はいつも通り可愛くて、綺麗だったが、
(今日もだ...)
今日も彼女は、スーツだった。
スーツと言っても、お堅い正装のようなものではない。
襟付きのシャツと濃紺に白のストライプのスリムなパンツスタイル。
実に、彼女らしくない服装だ。
彼女は生粋の騎士。
騎士道を突っ走る彼女はいつだって、特殊部隊の騎士達と鍛錬に勤しんでいる為に常に軍服や鍛錬用の動きやすい衣服を身に付けている。
パンツスーツスタイルなんて今まで一度も見たことがない。
何度も言うが、断じて似合っていない訳ではない。
(それはもう、バツグンに似合ってる!!!似合ってますとも!!)
真っ白な髪をハーフアップにし、伸びた前髪は横に流している。
シェイラが送った魔導石のイヤリングも服装にぴったり合っているし、オッドアイも神秘的で元からある美しさ倍増に。
おまけに隣で微笑まれてみろ、それだけで胸を撃ち抜かれてしまうではないか。
このように絶賛ルミアに惚れてしまっているシェイラは、彼女の一挙一動に見とれ、翻弄されていたわけなのだが、
彼女の一挙一動を目で追い続けるほど恋い焦がれていたシェイラは、彼女の、彼女らしくない行動や姿が気になって仕方なかった。