櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ
だからこそ、気づいた三つ目の変化。
ハーフアップした髪をまとめ留めるための髪留めが、ある日変わったのだ。
彼女の変化した右目と同じ金の髪留めに、左目と同じ藍色の宝石があしらわれた髪留め。
その藍色の宝石からは、かすかな魔力の香りがする。
つまりこれは、魔法使いから送られた魔導石。
魔導石とは魔法使いが自身の魔力を練りこみ作った石のこと。
この石は、魔法使いから魔法使いへ贈られ、その質と数で魔法使いの力量を図ることもある。
ルミアが今持っている魔導石はシェイラから贈られたイヤリングと、兄グロルから贈られた赤黒い指輪だ。
その指輪は銀のネックレスに通し、イヤリングは右耳につけて肌身離さず持っている。
どちらも魔導石の中でも、他に類を見ないほど極上の逸品。
この二つだけでも彼女の強さを示すには十分すぎるほど。
そんな中、彼女が新たな魔導石を身に付け始めた。
きっとプレゼントに間違いない。
しかも、シェイラの感が正しければ、これをルミに贈ったのは完全に『男』だ。
よく見れば分かること。
ルミに似合う様と作られたそれは、色合いとしては合格だが、女性に贈るにしては作りが粗雑すぎる。
細やかなディテールは歪。
明らかに男の作ったものだと、予測がついた。
だけどルミアは、「それ、どうしたの?」と尋ねるシェイラに、「ないしょ」と言って笑うだけ。
隠そうとしている。
自分に、男の事を。
直感でそう、思った。思ってしまった。
そして極め付けが、一昨日、二日前の出来事だった。