櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ
(やっばい、めちゃくちゃ遅れた......!!)
会議が予想外に伸び、約束の時間を大幅に過ぎてしまった。
およそ三時間ぐらいだろうか。
もしかしたらそれ以上だったかも。
エンマに頼み、ルミアに少し遅れると伝えてもらっているが、それにしても遅すぎる。
きっともう、彼女は待っていないだろう。
だけど、もしかしたら。
そんな小さな期待を抱えてシェイラは走った。
そして
誰もいないと思っていた待ち合わせ場所、そこに見間違いようのない白髪が。
その時の嬉しさと言ったら半端ではない。
これまでの不安とか、焦りとか、そういうの全てが全部吹き飛ぶくらい、嬉しかった。
「ルミ...!!」
背を向けている彼女に気づいてもらおうと声をかける。
そして振り向く彼女。
振り向きざまのルミアはやはり美しくて
「ルミっごめん、遅れ...」
そう言いかけたシェイラは、ルミアの表情を見て固まった。
彼女は凄く、驚いていた。
あまり感情が表に出ないルミ。
その彼女が、明らかにヤバいという表情をしている。
何ごと!?と固まっていると、ルミが何やら魔法を詠唱をし始めた。
誰にもばれないぐらい小さく、口元だけをかすかに動かして。
すると突然シェイラの目の前に氷の塊が出現する。
「!?んなっ...!!」
そしてその氷の壁から人が出てきた。
おかっぱ頭で白い着物を着た、小さな女の子。
その女の子は無表情のままシェイラを掴み掛り、物陰へと連れていく。
「なっ何...!?」
「シーーーッ」
状況を理解できていないシェイラが何かを言いかけると、小さな女の子は人差し指を口に当て、静かにしろと訴える。
おそらくこの子はルミが魔法で造り出した式神か分身だろう。
(な、なにが起こってるんだ...)
シェイラは、物陰からこっそりルミアを覗き見る。
ルミアはもうこちらを向いておらず、背を向けている。
それどころか、さっきまで気づかなかったが、誰かと話しているようだ。
相手の姿はシェイラがいる場所からはどうやっても見えない。
だけど、話しているルミは笑顔だ。
その笑顔に、シェイラはムッとする。