櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ
「キレイごとね」
シェイラの話を聞いていたアネルマは、彼の言い分を鼻で笑う。
「そんなこと言ってたら、いつまでたっても彼女は貴方のものにはならないわよ。現にとられちゃってるじゃない。見知らぬ誰かさんに」
「...うぅ」
「本当に彼女のそばに居たいのなら、手段を択ばないことね、ジンノみたく」
ジンノ。
その名を聞いて、シェイラはあからさまに表情を暗くする。
「......ジンノ、か」
「あの人が彼女を好いてることは知ってるでしょう?あの人は兄であることであの子の一番近くに居ること選んだ。彼のとった行動の方が、私は好きね。自分の欲望に忠実で」
「それは、...そう、かも...しんないけど......」
シェイラは落ち込む。
どんどん、どんどん泥沼にはまった様に。
励ますつもりで話を聞いていたが、逆効果だったようだ。
(失敗した...)
我に帰ったアネルマは頭を抱える。
人の相談に乗った経験が少ないことが仇になったよう。
面倒臭いなと感じながらも、どうにかしてこのヘタレ王子の手助けをしてやりたいという思いもある。
なにより、このままじゃ仕事が終わらない。
たとえ不本意であっても、この役職についたからには、周囲に恥じないくらいの働きをしなければ自身のプライドが許さない。
(ったく、しょうがないなぁ...)
シェイラはルミアのことが気になってしかたがない。
だけど、自分でルミに確認しに行くのは怖い。
だったらやることは一つだけ。
「分かったわよ、私があの子と学生服の男のこと調べてきてあげるから」
「え、」
「その代わり、貴方は仕事しなさい。これは条件よ。あなたの気になること全部調べてきてあげる代わりに、貴方はそこに積み上げられてる仕事全てを終わらせる。私が戻ってくるまでに終わってなかったら情報をあげない。自分で何とかするのね」
机の上に溜まった仕事はそう簡単に終わる量ではない。
だが、このくらいやってもらわないと。
ただで請け負うほどお人好しではないのだ。
案の定、シェイラは嬉しそうに目をキラキラさせている。
「分かった、頼む!」
そう言って頭を下げると、すぐさまデスクに向かい仕事に手をつけ始めた。