櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ
特殊部隊はフェルダンでも最も崇高な部隊。
そこに所属する事こそが騎士たちの憧れで、彼女は難なくその地位を手に入れた。
兄ジンノと同じくプリ―ストンもとい《聖者》オルクスの血を分けて生まれた彼女は、物心つく前からその一族の名に恥じぬ騎士になるために、血の滲む様な鍛錬と徹底した騎士道を教え込まれた優秀過ぎるほどの騎士だ。
そんな彼女が補佐官?
毎日、屈強な男たちと共に、嬉々として戦闘をやるようなこの子が?
確かに彼女は知性もある。
魔法学校でもすべてのテストで一位だった。
だから成れないことはない。
いやむしろ、とても優秀な補佐官になるだろう。
引っかかるのは動機だ。
以前の彼女はそんな気一切見せなかったのに。
どうして突然、補佐官になりたいなどと思ったのだろうか。
「...それは...」
「ん?」
「...それは、...補佐官が...彼の一番そばに居れるかなって...」
「......え、」
「ッだから...私はシェイラさんの、一番そばに居たいの...誰よりも」
尋ねられた彼女は、顔を伏せて呟いた。
白い肌は紅潮している。
見間違いかと思ったが、そうではない。
それはもう、口を尖らせて可愛らしく、いじけるように。
その時の彼女の感情はどう表せばいいだろうか。
名をつけるとすれば、そう
彼女は
間違いなく
嫉妬していた。