櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ







 ◆





 ――ガチャ



 低い音を立てて、木彫の重いドアが開く。



 中で待っていたシェイラはぱっと顔を輝かせた。



 誕生日プレゼントでも前にした子供の様に無邪気な笑顔を見せて。



「アネルマ、お帰り!!」



「...そのうっとうしい笑顔を私に向けないで。キラキラも飛ばさない!」



 それを向けられたアネルマはたまったもんじゃない、その期待に満ちたまなざしに答えることが出来ないのだから。







 ◆





 
 
 ドアを閉じ、執務室の中に入る。



 机の上を見ると、つい数時間前まで山積みなっていた仕事はきれいさっぱり片付いていた。



 何というやる気。



 正直、若干引く。



「...これくらい、いつもやってくれたら。ねえ...」



「ハハハ」



 シェイラはカラ笑いをこぼす。



 ルミアとすっかり話し込んでしまい、もう外は真っ暗。



 十時間近くこの執務室にこもって仕事をしていたのだろう。



 エンマにも手伝ってもらったに違いないが、それでも上出来だ。



「で?ルミどうだった?」 



 条件をクリアしたんだから教えてくれるよね、と熱いまなざしで訴えてくる。



 本当に、子供みたいだ。



 だが、今回は約束を守れそうにない。 



「...それがねえ...」



「ん?なに?」



「......彼女には会った、話も聞けた...けど...」



「けど...?」



 渋る彼女を不審に思い、シェイラは眉を顰める。



 アネルマは一度固く目を閉じた後、カッと目を見開いて一言



「言えなくなった!!ごめんっ!!!」



 と叫んだ。






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