櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ







「始まりはお前たちと同じ、ある某国に仕える特殊部隊だったらしい」



 しかし、ある時を境に彼らは暴走。



 任務外の暗殺を謀るようになってしまった。



 彼らの力を抑えきれなくなった某王国は、特殊部隊ごと国外に追放し、その存在ごと抹消しようとした。



 だがその頃には既に、彼らは一国の手に負えるような状態ではなかった。



 そして数日間の戦闘の末、一つの王国は滅んだのだった。



 皮肉にもその成果が各国の裏世界で評価され、彼らは暗殺部隊《オーディン》と名乗り今では数々の暗殺依頼を引き受け実行しているというわけである。







「やつらは次第に力を増幅させ、闇の世界では大きく名をはせるようになった。俺の耳に届く程度にはな。そこで、君たちに与える任務と言うのは、暗殺部隊《オーディン》の解体、そしてある少年の護衛だ」




 シルベスターの説明が終ると、特殊部隊の騎士達には新たに疑問が浮かび始めた。



「暗殺部隊の解体は分かるが、少年の護衛というのはどういうことだ...?まず少年って誰だ」






「その話は私から行います」



 特殊部隊の面々とシルベスターしかいなかったはずの部屋の中に新たな声が聞こえた。



 何やら聞き覚えのある女性の声。



 そして、影から現れたのは紫がかった艶やかな黒髪を一つに束ねた目元に刺青がある女性



 アイルドール王国で出会った占星術師ローグだった。



「ローグさん!!久し振り!!」



 ルミアは嬉しさに頬を染め、ローグに駆け寄り抱き付いた。



「ルミア様お久しぶりです。お元気そうでよかったです」



「ローグさんアイルドール王国から来て下さったんですか?」



「ええ。...と言うより戻って来たのです、我々の本来の居場所に」



「居場所?」




 ローグは占星術師クダン一族の人間。



 そしてクダン一族は本来、フェルダン王家直属の占星術師だった。



 つまり



「我々クダンは、この度シルベスター陛下の計らいにより再びこのフェルダンの地で星を読み、国の行く末を見ることになりました」



「おお!!という事はクダン一族復活という事か!!」



「ええ。そして今回、我々が予知した未来...それに暗殺部隊《オーディン》と少年が深く関わっているのでございます」



それから、ローグは語った。



なぜ、このタイミングでフェルダン特殊部隊が《オーディン》解体に乗り出すことになったのか。



キーマンとなる少年と暗殺部隊《オーディン》にどういう関係があり、どうして護衛をすることになったのか。



そして、



この事件の後、フェルダンが辿ることになる未来の行く末を──────




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