櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ
「...下着も脱ぐべきかしら?」
「そうして欲しい、と言いたいところだが、それは我らのアジトに返ってから、俺の目の前でじっくりとやってもらおう」
変態ね、こいつ。
などと内心思いながらも、ルミアは表情を変えない。
普通恥ずかしがったりするのだろう
ロランはルミアの反応の無さを不服に思ったのか、気に入らなかったのか、次は「そこに跪け」と言ってきた。
言われるがままに、椅子に腰掛けているロランの目の前で跪くと、突然ルミアは顎を掴まれグイッと彼の顔前へ引き寄せられた。
「...んっ!!何を...!!」
「ったく度胸だけは一人前だな。しかし、本当に美しい。もっと顔をよく見せてみろ」
そう言ってロランはルミアを掴んだまま、舐めるように美しいその顔を観察する。
潤いのある薄い紅色の唇
白い肌の上に浮かぶ淡い桃色の頬
髪と同じ長く白い睫毛
それに縁どられたこく輝く瑠璃色を宿す左眼
そして
長い前髪に隠れていた黄金の右眼が姿を現す。
「...!お前、この右目...フェルダンの王族の出か!?」
フェルダンに生まれし王族は、その証に黄金の目を宿し誕生する。
その黄金色の純度が高ければ高いほど、より王家に近い血統の持ち主であることを示すと言う。
その程度の知識はロランの耳にも届いていた。
だからこそ、目の前に現れた初めて見る黄金のそれに目を丸くしたのだ。
「...私は、王族などという高貴なくらいの人間なんかじゃないわ。たしかに、血は流れているのかもしれないけれど、私がそう名乗ったことは無い。ただの魔法学校の教員よ」
「.......そうか、分かった。一先ずは信じておくとしよう。にしても、お前はどこまで俺の想像を覆すのだリリー・ホワイト」
ロランの手がルミアの滑らかな肌の上をすべる。
不愉快極まりないそれに耐えていた時、ルミアとロランの背筋にぞくりと寒気が走った。
「!?何っ」
何事かと慌てて振り返る。
そして、二人の目が捕えたのは
碧く揺らめく魔力の炎を全身から発する、ユウの姿だった。