櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ
捕えた《オーディン》の一味たちを一か所に集める騎士達。
ざっと数えても五十人以上いるだろうか。
そこにローグが合流する。
「あれ?あのおっちゃんは?」
「私の仕事は未来を読むことですよ、力仕事は貴方がたがやってください」
「そんなあ!」
「ぶつくさ言わずにアポロさっさと行ってこい」
「え゛ーー!!!理不尽!!」
文句を言いつつも、ウィズに急かされしぶしぶルノー回収に向かう。
「...それにしても壊すだけ壊して...限度って言葉を知ってます?」
「ローグ!!お前も俺を責めるのか!?」
「責めない方がおかしいですよ、一人でこれだけ壊して...ルミア様が聞いたら悲しみます。間違いなく嫌われますね」
「――ッ!!お嬢に...!嫌われ...!!?」
「うわーローグさん辛辣」
「ミア嬢を出されたら、隊長は何も言い返せませんよ」
皆から責められた上ルミアに嫌われると言われたアイゼンは、しゅんと首を垂れた。
そんな彼を完全無視し、ローグは捕えられた《オーディン》の一員を困ったように見つめた。
「彼らどうするんですか?運ぶんですよね、フェルダンに」
「ああ。そのつもりだが」
「でも、どうやって?」
「それが問題なんだよなー」
「...考えてなかったんですね」
そんな風にのんびりと大きな荷物を運ぶ方法を考えていた最中だった。
ザッザッザッと何かの足音が聞こえる。
何やら集団の獣の足音のような...
「お!!まさか!」
全員の視線が、はっとその音のする方向へ向かった。
そこにいたのは
数十匹の狼に似た大きな獣を率いたイーリスがいた。
「やあ、仕事終わったみたいだな」
「イーリスさん!!」
「イーリスの兄貴!来てくれたんだ!!」
「ああ、俺達は情報収集と連絡係だからね。最初は何匹かこいつらを送るつもりだったけど、《オーディン》一味を運ぶのに人手がいるんじゃないかと思ってね」
イーリスは自身にすり寄ってくる獣たちの鼻頭や頭を撫でながら、辺りを見回して笑う。
「たぶんアイゼン隊長が考えなしに好き勝手暴れて、大荷物を運ぶための馬車まで壊すだろうってジンノが言ってたけど...みごと的中だ」
「流石ジンノさん...隊長のやることなすこと想定済みだ...」
「ジンノ~~そんなあ~~」
地面にめり込む勢いで落ち込んでいくアイゼンを、皆はおかしそうに笑った。
帰り際、イーリスの耳に獣の声が届く。遠吠えだ。
山を越えた向こう側、フェルダンのある方向から。
その内容を聞き小さく笑みを浮かべる。
「何?どうかしたのイーリスさん」
「...いや、フェルダンのリュカから伝言だ」
『任務完了』
イーリスは静かにそう伝える。
全員の表情がほっと緩み、皆が幸せそうに笑った。
「さあ、帰るぞ」
アイゼンの声ががれきの山に響く。
西の空は徐々に茜色に染まり始めていた。