櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ
...
結局、ジンノとシェイラはギャーギャーと言い合いを始めてしまい、抑えることを諦めたルミアとオーリングの二人は離れた場所で座り込み、呆れた様にため息をついていた。
「まったく、あの二人はいつもいつも喧嘩腰で...」
「ホント、シェイラさんも見た目より頑固な上に兄さんは短気バカだからなあ」
「アイゼンさんもだけど、子供だよあいつら」
二人がそんな話をしていると、どこからか目深にフードを被った男が現れる。
イーリスと一緒に諜報・連絡組だったリュカだ。
「お疲れルミ。初任務の感想は?」
「リュカ...任務は良かったんだけどね、兄さんとシェイラさんがね...」
「そっか。向こうでも隊長が好き勝手やったらしい...ジンノやオーリングが抑制剤だった分、開放感が爆発したんだろう」
「ああ...まったく。国に置いておくべきだった。ジンノもそうだけど隊長たちが暴れると環境破壊も甚だしい」
それはそうと、
「向こうの彼らは何なのかな?」
オーリングがにっこり笑いながら指さす方向には学生たちの群れ。
目的は当然のごとく、特殊部隊の騎士達である。
どうやら今回の任務に巻き込まれた生徒達発信で、彼らのことが広まったらしい。
普段から人々の羨望の眼差しを向けられる特殊部隊の騎士達。
本来、彼らは王宮の外に出ない。
これはけして意図したものではなく、彼らがただの戦闘バカであるために時間さえあれば訓練場に入り浸るせいが大きい。
もちろん任務の内容が今回の様に人目につかない大きな仕事だったりするからでもあるが、兎に角、彼らは滅多に人前に出ない。
そんな彼らが、今、魔法学校に居るのだ。
しかも、特殊部隊の顔と言っていいい『魔王』ジンノと、彼に肩を並べるオーリングのツートップが。
彼らは言わば若い子たちにとっての“アイドル”のようなもの。
姿を見れるだけで目が輝く。
歓喜に沸く。
人々の憧れの存在である彼らがいると知れば、一目見ようと集まるのは当然の事なのである。。
その結果、王宮から駆け付けた兵士たちによって作られた第三校舎を隔離するバリケードの外はまるでどこぞのアイドルが現れた時の様に、生徒や教師や学校に何の関係もない国民などの人々で激しくごったがえした状態になっていたのだった。