櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ
大半が女子生徒だが、よく見ると男子生徒もけっこういるようだ。
目的は明白。
彼らを見て楽しそうに笑っているこの鈍感娘、特殊部隊の騎士達と一緒にいる真っ白な美女を一目見るために決まってる。
だが、当の本人は
「さすが皆、男の子にも人気なんだねー」とのんきに言っている。
「(いやいや、あんただよ...)」
と、リュカとオーリングは心の中でつっこみをいれるのだった。
喧嘩をしていたジンノとシェイラも、集まってきた生徒たちに気付く。
ルミアを見て明らかに色めき立っている男子共にジンノとシェイラはぴきりと額の血管を浮き出させる。
「くそが、あのガキ共...!調子に乗りやがって」
「何であんな格好させてるんだよ」
「知るか、俺が来る前は下着だけだったよ」
「はあ!?」
そんなこんなでシェイラの怒りボルテージは順調に上がっていく。
言い合いを一時中断し、シェイラは自分の着ていた厚手のコートをルミアに差し出した。
「へ?」
「着て、いいから」
「...はい」
眉間にしわを寄せ、らしくもなく怒っている様子のシェイラにそれまでオーリングたちと笑っていたルミアはしゅんとして素直に従う。
それからシェイラは、コートを着込むルミアの腕をとり「こっち」と引っ張って連れていく。
どこかに消えていく二人の姿を見ながら、オーリングはジンノに尋ねた。
「...いいの、ルミちゃん連れてかれちゃったけど」
「ふん、クソガキ共に見られるよりマシだ」
「ははっジンノも寛容になったもんだ。いい傾向だと思うよ俺は」
「...俺もそう思う。ルミが喜ぶし」
オーリングとリュカが褒めている傍で、ジンノは集まっていた男子学生に「こっち見てんじゃねーよ」とガンを飛ばしている。
そんな彼に、「気のせいだったか...」と大きくため息をつく二人なのだった。