正しい笑顔の作り方。


「王子達、まだかなぁ。」



そのとき誰かが呟いた言葉に反応し、みんなが一斉に壁にかかった時計を見やる。



もうすぐでHRが始まる時間。



彼らはいつもギリギリに登校しているからそろそろ来ると思うんだけど...と思っていると。



後ろの扉がガラガラと音を立て、少し乱暴に開いた。



現れたのはやはり王子達だった。



「おはよー藤堂君!」


「秋山君もおはよ!」



私の周りで駄弁っていたクラスメイト達は目を輝かせ、すごい勢いで2人の周りを取り囲む。



いつもながら そのスピードには驚かされるよ。



こういう時の女子の団結力ってすごいと思う。



視界の端でその光景を見て 思わず苦笑いを浮かべる私。



毎日毎日よく飽きないなぁ。



あの2人は...なんだか少しうっとおしそう。



登校して来てまだ一言も喋ってないし。



特に藤堂君は女嫌いだって聞いた事があるけど、あんなに至近距離でベタベタされて大丈夫なのかな?



なんて 完全に他人事のように考えていたそのときだった。



「...どけ。」



藤堂君の地を這うような低い声が 聞こえてきたのだ。



「「「...。」」」



一気に静まり返る女子達の間を無表情で通り抜け 何事もなかったかのように自分の席に向かう藤堂君。



「言い方があんだろバーカ。」



その後ろから、秋山君もめんどくさそうに歩いて来る。



取り残された女子達は皆 ポカンと口を開けていたけれど、すぐに嬉しそうな表情へと変わり「かっこいいー!」と悶絶していた。



...実はこのやり取り、ほぼ毎朝行われている。



うん。


やっぱり私には理解出来ない。



でも慣れとは恐ろしいもので、最初こそ驚いたものの 今では何も感じなくなってしまった。



これって正常な反応なのかな。



ボーッとそんな事を考えていると、隣の机にガタンと荷物が置かれたのが分かった。



「橘、おはよ。」



「おはよ!」



軽く挨拶をしてくれた隣人さんは...あの秋山君。



そう。



私の隣の席にはクラスの王子様がいるのだ。

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