食べちゃうよ。
「川島」
不意に呼ばれて、お決まりのようにビクッと飛び上がる。
諒君の声は耳に心地よく響くのに、この声は生理的に無理だ。
あぁ、面倒。
あたしは顔をしかめて振り返った。
振り返った先には、あたしの予想通り上野さんが立っていて。
「川島、八代君につきまとうために上がったのか?」
そんなことを言い出す。
どこまで能天気な人なんだ?
あたしは、他でもない上野さんにイラついて帰ることにしたのに。
鈍感力、恐ろしすぎる。
「上野さんには関係ないでしょ?」
そう言い放ち、上野さんに背を向ける。
だけど、上野さんは全く気にしていなくて。
「ちょうど暇になって、俺も帰ることにした」
なんて言う。