食べちゃうよ。
こんな惨めなあたしを、綾香はおかしそうに見た。
そして再び口を開く。
「記憶がなくてもいいじゃん。
やったのは事実なんだから。
千草、良かったんじゃない?
八代君が健全な男子だと分かって」
「うん……」
返事したものの、まだ腑に落ちないあたし。
やっぱりショックだな。
諒君、どんな風にあたしを抱いたんだろう。
どんな顔していたんだろう。
それに……
あたし、変なことしていないかな。
考えれば考えるほど気になってしまって。
「そんなに気になるなら、答えは簡単だよ」
呆れた綾香があたしに言う。
「もう一回、誘惑したらいいんだよ」
そっか……。
もう一回、誘惑してみるのか。
そうすれば、きっと解決するよね。
単純なあたしの気分は、急に楽になっていた。