食べちゃうよ。




諒君は苦い顔をしたまま、あたしの手をぎゅっと握る。

不意にぎゅっとされたあたしは、やっぱりパニックを起こして硬直する。

そして、お決まりのように鼓動だけが響く。





「それにね、ちーちゃん」




諒君はそう言って、あたしの耳に口を近付けた。

吐息がかかり、身体を震わせるあたし。

もう、駄目。

何もされていないのに、あたしの体、酔っぱらったみたいになっちゃう。

諒君の行動一つ一つにドキドキして狂わされる。




諒君はあたしの耳に口を近付けたまま、囁くようにこう言った。




「そんなに胸元開いてると、我慢出来なくなっちゃうよ?」



「!?」




あたしは言葉を失い、とうとうその場で飛び上がる。

きっと、三十センチ……いや、一メートルは飛び上がった気分だ。




あたしの馬鹿!

なにいちいち反応してるの?







「ふふ。ちーちゃんって純粋だね」




諒君は超余裕でそんなことを言って。

余裕がないのはもちろんあたしだけで。

あたしは完全に諒君に弄ばれている。

この前の朝チュンした時から分かっていたけど、やっぱり諒君のほうがずっと上手(うわて)。

あたしがどれだけ背伸びしても、諒君には敵わないのかもしれない。





「ちーちゃん、可愛いから襲っちゃうよ?」




その言葉に、あたしは身も心も焦がされた。



< 48 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop