食べちゃうよ。






ビクッ……



飛び上がると同時に、



ドキドキドキドキ……



鼓動が速くなる。

だけど、諒君といる時の鼓動とはまた違う。

背筋が寒くなって、胸が苦しくて、逃げ出したくなる。





「千草、久しぶり」




昔は、その声が大好きだった。

周りが何も見えないほど惚れて、言いなりになって、貢いで……浮気された。

そう、彼はあたしの元彼、あたしのトラウマの原因の高山直斗。





彼と別れて、しばらくしてようやく気付いた。

あたしが馬鹿だったと。






直斗はあたしのこと、どう思っていたんだろう。

浮気相手の一人としか思っていなかったんだろうな。

その証拠に、直斗はあたしを見ても全然気まずい様子もなく。




「誰?」




友達に聞かれると、




「友達の一人」




なんて言う。

あたしは直斗のこと、友達だなんて思ったことなかったのに。

直斗はどうしていつもあたしを愕然とさせるのだろう。



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