食べちゃうよ。




「別に」




あたしはぶっきらぼうに答える。

すると、直斗は不意にあたしの手をぎゅっと握って。

あたしは慌てて身を引いて。

だが、離してくれるはずもなくて。




「そんなに怒るなよ」




なんて言われる。






そんなに怒るな?

ふざけてる。

直斗、自分がどんなに駄目なことをしたのか、やっぱり分かっていないんだろう。





そして挙げ句の果てに、




「俺はやっぱりまだ、千草のこと好きなのに」




なんてデタラメを言われる。

……そう、デタラメなんだ。

あたしはずっとこの甘い言葉に騙されてきた。

そして、直斗の浮気相手になって、直斗の本命を傷つけてきたのだ。





今になって……あたしの気持ちが諒君に傾いて、やっと分かった。

どれだけ直斗がダメで、どれだけあたしもダメだったのか。

もう、直斗の言葉には騙されないから!



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