食べちゃうよ。








昼過ぎ。

あたしは諒君と、とあるビルのベンチに腰掛けていた。

繁華街にあるのに、緑や水で溢れていて。

洗練されているこのビルは、雰囲気も良くて。

デートスポットなのではないかというほどカップルがいる。

なんだか嬉しいな、こんなところに諒君と来れて。





「ちーちゃん、デートするって言って来たけど、もうすることないね」




諒君は困ったように言う。




「俺、ネタ切れかも」



「あたしも……」





そうなのだ。

直斗ともデートらしいデートをしたことのないあたし。

そもそも、デートってどんなことをするのか分からない。

諒君を楽しませないと、と思って考えれば考えるほど深みにはまって。

何も思い浮かばないのだ。

あたしの馬鹿。

だけど、この場所にこうやって諒君と座っているだけで幸せを感じてしまうあたしは、すでに諒君中毒だ。



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