夏恋
5.6限もあっという間に終わり、HRの担任の話も珍しく短かった。
そうだ、今日は部活が休みなんだ。
今日はラッキーな日だなあ。あの鬼顧問と呼ばれている中川先生が休養しろと休みをくれるとは…
「青羽ー!帰ろー!」
渚が私の元に来た。
「んー帰ろー」
「未玖はー…」
私と渚は未玖の方を見る。
「あ、私部活あるから!」
未玖は吹奏楽部で、フルートという楽器を担当している。
「そっか…!未玖頑張ってね!」
うちの高校は吹奏楽はさほど強くもないが、野球やサッカーは強い。
地方大会を勝ち抜いたことも何度もあり、吹奏楽も応援としてたびたび試合に行くのだ。
最近は野球部がまた勝ち抜いて、次の試合の応援の練習で忙しいらしい。
「うん!じゃ!」
「じゃ、行こっか!」
私と渚は未玖に手を振って生徒玄関へ向かった。
廊下を通り過ぎるたびに、合唱部の歌声、軽音部の軽やかなメロディ、かるた部のかけ声…様々な青春の音が聞こえてきた。
玄関で靴に履き替え、学校を出た。
いつもと変わらない帰り道を歩く。
今日も暑かったな。
日に日に気温が上がる夏休み前の今日この頃。
空はまだまだ昼間のように日差しがさしている。
「最近、翔が部活忙しくて全然合ってないんだよなあ。」
翔は渚の彼氏で、隣町の人なんだって。
高校ではかなりモテて、たくさん告白されるらしい。
渚のおばあちゃんは隣町に住んでいるんだけど、ある日おばあちゃんが急病で手術することになって手術室の前で泣いている渚のそばにずっといて励ましてくれた子がいて、その人が彼氏の翔先輩だったと聞いたときは「ああ、これが運命なんだな」と感じた。
ああ、私もそんな出会いしてみたいな。
「あっ!おばあちゃん元気?退院したって聞いたけど」
「全然元気!最近なんか毎朝ジョギングしてるよ」
元気そうでよかった…
2人になって世間話で盛り上がってたら本屋さんへ向かう曲がり角に着いた。
「あっ!私、本屋さんに用事あるから!」
「あ、そうなの?わかった!じゃあね〜!」
渚を見送り、私は足早で本屋へ向かった