夏恋
ぼーっと町を眺めていると、町の少し向こうにビルが立ち並んでいる所を見つけた。
「あれが、櫂の住んでる町だよね」
私はビルが立ち並ぶはるか向こうを指差した。
「んー。そうだね。」
太陽が山にさしかかるまでは2人、なにもしゃべらずに少し上から覗く町を眺めていた。
「あっ!櫂!もう太陽が沈むよ!カメラカメラ!」
だけど、櫂の反応がない。
「櫂…?」
「青羽、俺がここにきて何を撮りたいかわかる?」
え?どうしたんだろ。急に。
「この町の景色でしょ?あと、海と山」
櫂は首を振った。
「確かにそうだけど、俺は綺麗な景色を撮りに来た。」
「町も…綺麗だよ?海も、山も…」
「違う。」
と言って櫂は夕暮れに近づく空を指差した。