夏恋
一階の角の方にピンクと白を基調としたロゴの店が見えてきた。
都会の方では結構有名な雑貨屋さんだと聞いたことがある。
多分この店のことだろう。
「この店!」
渚は私たちの方を振り返って言った。
ん〜…と未玖はサラサラの自分の髪に指を通しながら何かを考えるような仕草をした。
「どんなものを買えばいいのかイマイチわかんない」
…ですよね。未玖らしい答えだ。
未玖はきっちりとしているのにこういう女の子が好きそうな物には奥手なのだ。
でも私もイマイチよくわからない。
翔平先輩のことをあまり知らないし…
渚は少し俯いた。
「んーっとねー、特にこれといった物は決まってないんだけど、翔は赤が好きだよ!」
赤…ねえ…。
サッカー部のキャプテン…
赤…。
頼りになる数少ないキーワードを頭のなかで繰り返す。
考えても思いつかないので店のなかにさっさと入った。
未玖も何か考えるそぶりを見せながら店のなかに入っていった。