203号室で暮らそう


あ、ぶどうジュースだ。
 
あるお客さんの、買い物カゴの中身を見て、ちらっと思った。
 
私が好きだった、ぶどうジュース。
 
いつだったか、雄輔がこのスーパーに来て、私にこれを差し入れしてくれたことがあったっけ。
 
大事にとっておこうと思ったんだけど、部屋に無造作に置いておいたら、陽景くんが飲んでしまった。
 
私、その時そんなにショックじゃなかった。
 
雄輔がくれたぶどうジュース。
 
陽景くんが、きっと、その時に。
 
私の雄輔への思いを、一緒に飲み干してくれたんだ――。
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