203号室で暮らそう
はっ、はっ、はっ、はっ。
 
私の息は浅く、何度も呼吸を繰り返していた。
 
ずっと、何も食べてなかったから――力が入らない。

「日浦さん? 大丈夫?」
 
レジ間を巡視していたらしいレジチーフの声がした。
 
やがて、視界が晴れてくると、メガネをかけたチーフが、心配そうな顔つきで、私の両肩を支えてくれているのが見えた。

「だ、大丈夫です。ただの、貧血です……」
 
さっき、佐原さんたちに勧められたおはぎ、ちょこっとでも口に入れておけばよかったかな。
 
いや、でも、喉を通らないや。
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