203号室で暮らそう
こころのどこかに、しまっておいた、名前。
 
そして、その名を呟いた途端、どうにもやるせなくなってしまって。
 
脚を抱えて座り、おでこを膝に当てて、座り込んでしまった。
 
陽景、くん……。

「柚実ー。おい、何ラッパ飲みしてんだ。木綿花チャン、泣いちゃったよー」

「ハルカゲくんに会いたいってさー。柚実、ここに呼んでやれよー」
 
周りの男子が声をあげる。
 
呼べるもんなら、呼んで欲しいわよ。
 
会えるものなら、会いたいわよ。
 
会いたいんだから、会いに来てよ。
 
陽景くん……。

「大丈夫? 木綿花。少し酔った?」
< 182 / 219 >

この作品をシェア

pagetop