203号室で暮らそう
そのまま彼女は携帯を開き、操作して携帯を耳に当てた。

「――あ、もしもし? 陽景くん? 久しぶり。……え? 柚実よ、柚実」
 
電話の相手、陽景くん――? なの? うそ……。

「うんうん。元気? ……そっか。……え? 木綿花? 何だか実家が大変らしくて、退学するとか言ってたからさあ、……うん」
 
ほ、本当に、その電波の向こう側には、陽景くんがいるの?

「あー、大丈夫。うちで一緒に暮らすことになったから。うん。……そう。え? いるよ。木綿花なら、今ここに」
 
知らずと胸の前で祈るように手を組んでいた私に、柚実は耳に当てていた携帯を、私に差し出した。
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