203号室で暮らそう
第7章
陽景くんは、まもなくして実家から出た。
 
やはり、昔好きだったひとが、自分の父親のお嫁さんになるだなんて、そんなことをまざまざと見せられるだなんて、耐えられないからだろう。
 
一人暮らしをするという手立てもあったろうに、陽景くんは“ゆーかともっといたいから”などと柔らかく笑ってくれた。
 
婚約、などという言葉を大仰にとらえないでもいいから、とも言ってくれた。
 
ゆーかとずっと一緒にいたいから。
 
ゆーかをもっと支えてあげたいから。
 
ゆーかを……好きだから。
 
だから、傍にいさせて、と陽景くんは言った。
 
私としては、自信がなかった。
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