203号室で暮らそう
私、おばちゃんにはモテるのかな。
 
仕事だから、笑顔はつくるようにしてはいたけれど、営業スマイルでも、こうやって褒められるのは嬉しい。
 
そのお陰で、ちょっとした高揚感の中、私はその後もテキパキと仕事をこなした。
 
次のお客は、ペットボトルのジュース1本だけのお買い上げだった。
 
あ、ぶどう100%のジュース。私の好きな商品だ。

「以上、1点のお買い上げ、112円でございます――」  
 
私は商品を台の上に置いて言った。
 
と、ふとお客の顔を見て――ハッとした。
 
小柄で、短髪で、どこか精悍さを感じさせる風貌の男の子――雄輔だった。
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