進む道。
「ん…。」
「あ、起きた?おはよーあらしー。」
冷たい指が俺の頬を撫でた。うっすらとした意識のなか、その指に懐かしさを感じた。
嗚呼、ここは天国なのかな。そんならしくない事を考えながら目を開ければ、顔を近づける木葉とあの女の子の姿が。
「わっ。」
驚いて飛び起きれば、彼女の頭とぶつかってしまった。
「い…ったた…。」
「…っ、ご、ごめんなさい。大丈夫ですか。」
ぶつかったのは俺の方なのに、痛む額を押さえて焦る彼女。驚きも忘れ、俺はその姿に愛らしさを感じてくすっと笑った。
「あー大丈夫大丈夫、嵐はそんなやわじゃねえから。」
ベッドに座る俺の頭を思いきり撫でて、木葉がにっと弧を描く。
「コイツの頑丈さを一番知ってる俺が言うんだから本当だよ、信じて信じて。」
優しい口調で落ち着かせる木葉。
彼女に心配させないように、木葉なりに気を使っているみたいで、昔からの付き合いだからか、見慣れたその優しさが少し照れ臭かった。
「ちょ、嵐。一人で笑ってんなよ。」
「悪い悪い。お前の新たな一面を見れて、俺なりに嬉しくてさ。」
「ぜってえ馬鹿にしてんだろ。」
ぷくく。と笑いを堪えていると、頬を膨らませる木葉。昔から木葉は、拗ねるとこの顔になる。分かりやすい幼馴染みに、また嬉しさが溢れた。
「な…。」
「あ。」
そうだ。木葉に集中して、彼女を忘れていた。じゃれていた俺たちを見て、俯き震えている彼女。思い返してみれば、彼女は生徒の山に一人立っていた子。何か気分を害してしまったのなら、それなりの制裁が待っているのでは。と身構えた。
「なんて素敵な友情。二人はやっぱり仲良しなんだね。羨ましいわ…私もそれくらいのお友達と出会いたいです。」
「へ…?」
椅子に座っていた彼女は勢いよく立ち上がり、長い髪を揺らして語る。終いには、俺たちに向けて「ブラボー。」と手を鳴らした。