進む道。
パチパチと手を鳴らし続ける彼女に「ところで。」と話しをふった。
夢で見た女の子に似た彼女と、意識が飛ぶ前に言った彼女の『見つけた。』 の言葉が引っ掛かる。
「さっき俺と目があった時何か言ってたよね。見つけた?とかなんとか。」
『どうして?』
俺の問いかけに、鳴っていた拍手の音は止んだ。それが何故か、答える気はない。と訴えているようだった。
「…今はちょっと。」
「そっか…。」
案の定、答えはNO。
ブラボー。と輝かせていた彼女の瞳から、光が消えて見えた。聞かれたくない事だったのかもしれない。言葉を詰まらせた俺を気遣ってか、木葉が口を開く。バシバシと叩かれる背中が、少し痛かった。
「馬鹿だなぁ嵐は、女の子と話したいならこっちから名乗るのがナンパの基本だろ。ったく、慣れてないならするなよなー。」
「べ、別にナンパなんか。」
「はいはい、照れるなら最初からしなーい。」
「だから違うって。」
軽口の木葉に流されないよう、驚いて紅潮する頬を隠しながら否定した。あーもう。と照れる気持ちを溢す。
「違うならいちいち反応すんなよ。」
「余計なお世話だ、馬鹿。」
「ふふ。」
耳をくすぐる声に反応して、二人で彼女を見れば口許を隠してクスクスと笑っていた。
窓から射し込む光が、彼女をキラキラと照らす。
(嗚呼…好きだな。)
直感でそう思った。
サラサラと流れる髪に、そっと触れて。
弧を描く目元に、そっとキスを落として。
紅く色付く頬を包み込んで。
欲求のままに伸びた手を、我に返って引っ込めた。
「ぉ、面白かった?」
気づいた気持ちに蓋をして、棚に押し込める。振り絞って出した言葉は、少し裏返った。
「あ、すいません。改めて仲良しだなぁって思ったらつい…。」
「いや、いーのいーの。俺も嵐も人が笑ってる姿見るの好きだから、な?」
「おう。」
頷いて、俺も。と伝えればまた心地よい笑い声が耳をくすぐる。
「嵐くんも木葉くんも、優しいんだね。」
ありがとう。と微笑みを向けてくれる彼女に、何で名前を知っているのかなんて疑問は流れていった。