進む道。
「そんなのお互い様だよ。…ところでさ、何で俺達の名前知ってんの?」
流れた疑問は、木葉に漂着し、代わりに問うた。
目を大きくして、驚いた表情を見せる彼女。
可笑しな事でも聞いてしまったのか。木葉と顔を見合わせて反応を伺う。口を開いた彼女に、俺達は合わせてふきだしてしまった。
『チャラくて人懐っこいのに、意外と真面目な青野木葉(あおのもくば)くんと。その木葉くんとよく一緒にいて、女の子からの人気が高い黒城嵐(こくじょうあらし)くん…だよね?。よくクラスの子が噂してるから、自然と覚えちゃって。』
「まじか。」
「ははは。俺達そんな風に見られてたのか。」
見た目派手なのに誰にでも優しい木馬は、昔から好かれやすかった。だけど、その分人に妬まれたり、調子にのって敵を作ってしまうことも多かった。そんな木葉に付き合っていると、自然と俺も目をつけられるようになって喧嘩も耐えない日々。それなのに、意外と噂は綺麗に纏まっていてーー
(ほんっと、奥底まで知らないって平和でいいね。)
「少女漫画みてえだな、本当に女子の頭の中って。」
妄想フィルターで、自分の受け入れがたいものは見ない。
『女の子からの人気が高い』
俺に夢を見て告白してくる子もいた。だけど、彼女たちも、いざ付き合って本当の俺を知っていけば皆自然と離れいった。
喧嘩しないで。
他の子と話さないで。
私を一番に見てよ。
どんどん押し付けられる、相手からの欲求。理想。夢。
煩わしい。
「女の子、苦手なの?」
険しい顔でもしてしまってたのか。彼女は眉を下げて、俺を見つめていた。
大丈夫。と微笑むと、そっか。と返事が返ってくる。納得してなさそうな彼女を他所に、今まで続いていた笑いの壺に蓋をして、木葉が立ち上がった。
「改めて、チャラくて真面目な青野木葉(あおのもくば)でっす。二年。宜しくね。俺、成績は良いけど、結構危ない男だから。そこんとこよろしくーっ。」
噂話に付け足して、新たに自己紹介を切り出す木葉。その唐突さに追い付けなかった俺たちは、間を置いて木葉に続いた。
「同じく二年、黒城嵐(こくじょうあらし)。木葉とは幼なじみ。嵐って呼んでくれていいよ。それと…俺は優しいから、安心してね。宜しく。」
「ふふふ。白沢心咲(しろさわみさき)です。二人と同じ二年です。宜しくね。」
自己紹介を照れてるのか、小さく笑う彼女の頬は紅く染まっていた。