進む道。
「うわ、さっむ…。こんな所でよく寝れるなお前。」
錆びた扉を開く音。
ぶつぶつと呟く木葉を、狸寝入りで待った。
「起きてるの知ってるっつーの。ばーか。」
「…姉ちゃんと二人きりにした罰。」
「気まずいのは、お前だけじゃねえだろ。」
横に寝転がる木葉も空を見上げる。
「髪、赤くなったよな。」
昔と変わらないくるくるとした髪を眺め、久し振りに昔に耽った。子供だった俺には分からなかったけど、多分…木葉は姉ちゃんが好きだったんだと今なら分かる。それが過去形なのは、俺がコイツから離れたくなくて、認めたくないだけなのかもしれない。木葉の中のナンバーワンは、俺でいてほしいがための単なる我が儘にすぎないけれど。
「お前も明るくなったよな。昔は俺と同じで真っ黒だったのに。」
「はは、だな。」
そう言えば。と話を変える。
先生から聞いた白沢さんの話を、木葉に全部話せば同じく眉間にシワを寄せて、不機嫌になった。
下衆いな。なんて話をすれば、木葉がすることは一つだった。
「ここはアレだな。俺等の所に、白沢さん入れようぜ。」
「お前ならそう言うと思ったよ。」
小器用に円を書いて飛ぶように起き上がった木葉は、早く。と出口に向かった。
『俺は優しいから。』
白沢さんにした自己紹介を思い出して、クスッと笑う。本当に優しいのは、木葉だと言うのに、何も知らない人はきっと俺の言葉を信じるだろう。
綺麗な彼女の微笑みが、俺の汚れた感情と正反対で。自分の汚さを際立たせてまた可笑しかった。