パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを
私を見る彼女の目力が強くて、今すぐにでも退散したいくらいだった。
「お兄さんとね、結婚することになったの」
「えっ……」
警告も空しく、彼女が口にする。
耳を塞ぐことすら叶わなかった。
突然のビッグニュースは、私にとってのバッドニュースだった。
ついさっきまで、幸せの絶頂に向かって上昇していた気持ちは、一気に地へと叩きつけられたのだ。
いつかこういう時が訪れる。
そう思ってはいたけれど、その日がこんなに早く訪れるなんて、考えてもみなかった。
あっくんが私を連れ出したのは、このため?
彼女を私に紹介するため?
告白されるかもしれないという馬鹿げた妄想をしていたなんて、私のなんと惨めなこと。
哀れを通り越して、滑稽ですら思える。
幸せオーラに満ち溢れた彼女に圧倒されてしまった。
「そうなんですか……。あ、おめでとう。良かったね、あっくん」
なんとか愛想笑いで返したものの、うまく笑えるはずがない。
引きつっていることにどうか気づかないでと願うばかりだった。