パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを
◇◇◇
「もうっ、二葉ったら、一体どうしたっていうのよ」
琴美を置き去りにした場所まで走って戻ると、琴美は腕を組んだポーズで眉間に皺を寄せていた。
「ごめんね、琴美。ちょっと急用ができちゃって」
「えー!?」
「ほんと、ごめん」
何度も謝り、「この埋め合わせは必ずするから」ということでようやく解放してもらうと、バッグからスマホを取り出した。
「あ、あっくん、今どこ?」
『どうかしたのか?』
「……うん、ちょっと話したいことがあって」
『今、電車を降りたところだ。家で待ってるよ』
もうそっちのほうまで帰ってるの?
家でこんな話、とてもじゃないけど出来ない。
「待って。家じゃなくて……そうだ、近くの公園で待てない? すぐに行くから」
そう告げると、電話を切って再び走り出した。