パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

「よろしくね、二葉ちゃん」


私よりもふたつ年上だという紗枝さんが、私とは対照的に美しい顔立ちで微笑んだ。


「篤哉ったらね、しょっちゅう『双葉が、双葉が』って、双葉ちゃんのことばかり話すのよ?」

「そうですか……」


ちょっといじけたように話すけれど、本当のところは、私の存在にはまったく動じていない。
恋人の余裕がひしひしと感じられた。


「おい、紗枝、やめろって」


恥ずかしそうに紗枝さんを牽制するけれど、あっくんだってまんざらじゃないという感じだ。
仲良くじゃれ合うふたりは、どこからどう見てもお似合いだった。


「篤哉たちは何を頼んだの?」


私が一度も呼べたことのない名前を難なく口にできる彼女が羨ましくて、あっくんを手にした彼女をちょっぴり妬ましかった。


「ね、あっくん、お邪魔だろうから、私は先に帰るね」

「あ、おい、二葉!」

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