パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを
◇◇◇
息を切らせて待ち合わせた公園に到着すると、ベンチに腰を下ろすあっくんを見つけた。
いるのは分かっていたくせに、ドキっと反応する鼓動。
夜の七時を過ぎた時間。
ひと気のないのは当然だけれど、明かりが少ないせいで、さらに寂しい雰囲気を漂わせていた。
街灯が照らす、その下。
急いで駆け寄り、呼吸を宥める。
「一体どうしたんだよ」
ちょっと不機嫌な様子に戸惑いつつ、肩を上下させて深呼吸を繰り返した。
「あっくん、お願い。紗枝さんと別れて」
走って来た勢いのまま、飛び出したひと言。
あっくんは、目を大きく見開いて「え?」と声を漏らした。
「……何を訳の分からないこと言ってるんだよ」
呆れるような口調だった。
眉間に深く刻まれる皺。
おかしなことを言っているのは分かってる。
でも……。
「だって……だって、紗枝さん……」