パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

◇◇◇

「どこ行くの?」


あっくんに手を引かれて家に着くなり、車へと乗せられた。
私の問いには答えず、車を発進させる。
明かりの灯る家がどんどん遠ざかり、代わりに大きな不安が押し寄せる。

さっきのキスは、どういう意味?
私の言葉を止めるためだけのもの?

ハンドルを握るあっくんの横顔を見てみても、その答えには辿り着けそうにもなかった。
どこをどう走っているのか全く見当もつかなくて、それが余計に不安を煽る。
終始無言のまま小一時間も走らせて、車が停められた。


「あっくん、ここって……」

「引き返すも引き返さないも、二葉次第だ」


そこで初めて合わせられた視線。
見たこともない真剣な眼差しが、私を射抜く。


……どういう意味?
それって、あっくんも私を……?
そう思ってもいいの?


答える代わりに、助手席のドアを自分の手で開いた。

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