パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

◇◇◇

カチャっという音がすぐそばで聞こえて、そっと目を開けてみる。


「やっとお目覚めか」


部長の声に、うつ伏せていた身体を慌てて起こした。
いつの間に着いていたんだろう。


「二葉は、本当によく寝るよな」


コーヒーカップを片手にクスクス笑う。


「……すみません」


いつもいつも、本当に恥ずかしい。
私が部長に見せる姿は、寝ているところばかりだ。


「いや、おかげで可愛い寝顔をバッチリ見られたしね」


いたずらに笑う。


「……いつからここに?」

「うーん、一時間くらい前だったかな」


そんなに前から!?

部長は腕時計を見て、そのままスッと左手を伸ばした。

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