パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

◇◇◇

「ねぇ、キミ、ひとり?」


男に声を掛けられた。

今夜はひとりでいたくない。
雨宿りのつもりで入ったバーで、出会った男に誘われるままホテルへ来た私。

こんな無意味なこと、したことなんてなかったのに。
どうにもならない想いが苦しくて、心の隙間を埋めたかった。

こんなときは、少しくらい手荒な方がいい。

愛情なんてこれっぽっちも感じない相手を“篤哉”だと思うしかなかった。

彼は篤哉。
そう自分自身に思い込ませて、無我夢中で求めた。


「篤哉っ――」

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