パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを
「今、ふたりでアイコンタクト取ってなかった?」
私と部長を交互に指差し、詮索するように琴美が私を見る。
「や、やだなぁ、勘違いだよ」
鋭い指摘に、思わず口籠る。
社内恋愛が禁止されているわけではないけれど、上司と恋なんて、いくら琴美といえど簡単に口には出来ない。
でも、カーッと熱くなる頬は、どうにも誤魔化しがきかなかった。
「私の目が節穴だとでも?」
今度はテーブルに身を乗り出して、琴美が詰め寄る。
ジトーっと湿気を含んだ視線に、ひたすら瞬きを繰り返す私。
「……ごめん」
もう降参だった。
「実は部長と……」
「ええっ!?」
「――ちょっと、声が大きいってば!」
一斉に周りの視線が注がれる。
シーっと唇に人差し指を当てて、琴美を睨んだ。