パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

◇◇◇

「二葉!」


仕事を終えてエントランスを抜けたところで、突然声を掛けられた。
それは、あの夜以来のあっくんだった。


「今までどこにいたの!?」


驚いて駆け寄る。
急に目の前に現れた姿に、気まずいなんてことは考える余裕もなかった。


「……ごめん、心配かけたな」


無事な姿を確認できて、ホッと胸を撫で下ろした。


「車で来てるんだ。ちょっと話せないか? 家だとちょっとね……」


戸惑う私に、「連れ去ったりしないから」と悲しく笑う。
そんな心配はしていなかったけれど、ふたりきりになることに躊躇したのは事実。
でも、このままというわけにもいかない。

私を乗せてゆっくり発進した車は、すぐ近くのデパートの駐車場へと停められた。


「この前の夜は、悪かった」

「――ううん、謝るなら私のほう」

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